ベトナム駐在小児科医+online MPH留学生のブログ

University of Liverpool (UoL)のオンラインMaster of Public Health (MPH)コースを受けようとした理由

ずいぶん更新をサボっていましたが、UoLのオンラインMPHコース開始まであと2週間となったのでこのコースを受けようとした理由を書いていきます。

参照:https://online.liverpool.ac.uk/programmes/master-of-public-health/

 

なぜMPHを目指したか?

所信表明でも記載した様に、私は日本で救急を専門とする小児科医として10年以上子ども達の診療を続けていましたが、2022年8月からベトナムで日本全出資の病院を立ち上げるプロジェクトに参加しています。

・医療費は無料(寄付によって賄われている)にも関わらず、交通費がないから病院へ行かせてもらえない子ども達。行かせてあげられないお母さん・お父さん。

・交通費をなんとか自分の牛や家を売って工面するお母さん・お父さん。

・病院に辿り着いても混雑がひどく、体がきついのに12時間近く待ち、泣き喚いている子ども達。泣ける元気がすらなく、ぐったりしている子ども達。

1つの入院ベッドに3人以上ごろ寝しぎゅうぎゅう詰めにされている子ども達。

・我が子の呼吸が悪く挿管(呼吸用の管)されているのに、人工呼吸器がなくスタッフも不足しているため、呼吸用のバッグを交代交代で夜通し押し続けている家族(寝てしまい手が止まるとその子は死んでしまいます!)。

 

日本で当たり前にできることが全くできていない現状を目の当たりにしてなんとか発展途上国の小児医療を盛り上げられないかと思いました。

5歳未満の子どもの死亡率は日本で0.25%、ベトナムで2.0%、世界の平均は3.7%。衛生面の改善、水・食料の確保、ワクチン接種の強化、教育の充実など、多くの要素でこれらの数字は幸い年々減っていますが、いまだに世界を見渡すと大体クラスに1人くらいの子が残念ながら亡くなっている状況です。まだまだこれからです。

 

小児科医である自分にできることは何かと考えたときに、思いついたのは現地に行って現状を知って改善点を見つけ出すことと、その武器となり得る公衆衛生を学ぶことでした。公衆衛生では世界の健康について、医学とは違う角度から見る方法を学べます。

医学では、下痢をしている患者さんに対して、どの様に判断しよう、どの様な検査を施そう、診断はなんだろう、そして治療はどうしよう、という目線で見ます。公衆衛生では、下痢をしている集団はこの地域にどのくらいの数がいて、その原因は何か?予防できるものなのか?という目線で見ます。つまり、医学では個人個人に焦点が当てられ、公衆衛生では集団や地域に焦点が当てられます

医学も公衆衛生も両方学んで、現地のことを知れば、子どもの死亡率は下げられる方法を考えられるかも知れないと考え、MPHコースを目指すことにしました。

 

最終的にUoLにした理由

MPHコースと一言で言っても世の中にはごまんとあります。日本・海外問わず数多くのコースがありますが、私自身がUoLのオンラインMPHコースを選んだのにはいくつか理由があります。重きを置いた順に理由を並べています。

 

①小児の公衆衛生を研究する教授がいる

修論はどうしても小児関係で書きたかったので、小児の公衆衛生について研究されている教授がいることが一番大事なポイントでした。多くの大学で小児関係の教授はいらっしゃいますが、UoLには子どもの貧困や健康の不平等に関する研究を多くされているDavid Taylor-Robinson教授がいらっしゃることが決め手でした。論文の指導にあたってくれたら嬉しいなという思いで頑張っていきます。

 

②先駆者がいる

MPHコースを色々選んでいる時、いくつかのブログも読ませていただきました。そんな中、7年前にUoLのonline MPHコースに入学し、無事に卒業された小迫さんのブログで受講中の葛藤を読ませていただき、相当大変そうだけれども先駆者がいるので仕事しながらでも頑張ればいけるかも知れないと思えたことが決心する一つの理由となりました。ブログの中で書かれていた、学生へのサポートが充実しているというのも惹かれる点でしたし、実際入学前からサポーティングスタッフによる密なメールが来て、これのことか!と思いました。どんな質問に対しても真摯に対応していただき、ありがたい限りです。

 

③オンラインが充実している

ベトナムで仕事をしながら受講するということで、最初はベトナム内で土日だけ受講できるところを探していたのですが、フルタイムの大学院しかなく断念しました。そのためオンラインで取得する道しか自分の中ではありませんでした。日本の大学も調べましたがオンラインで受けられるところはなく(もしかしたら長崎大熱帯研がもしかしたら対応してくれるかもと小耳に挟みましたが)、ほとんどがアメリカかイギリスの大学でした。オーストラリアのMonash大学に問い合わせたところ、”Please note that our Health courses are only available to Australian Citizens.(オーストラリア人しか取らないよ)”と言われ断念。

Studyportalsや小迫さんのブログなどで検索しながら、UoLに辿り着きましたが、そのオンラインコースの充実度に驚きました。また、USMLEや語学留学などで有名なKaplanと提携しているオンラインサービスであることや、勉強のためのlearning platformがしっかりしていることも決め手となりました。

 

④英語で学べること

オンラインでそもそも日本語で学べるMPHが自分が調べた限りなかったので、どちらにしろ英語で受けるしかなかったのですが、英語で受けられることは自分の中でのメリットでもありました。帰国子女ではありながら英語をサボりまくっていた自分にとってこの機会は自分の尻に火をつける絶好のチャンスでした。

UoLの入学資格はIELTS 6.5(WritingとSpeakingは7.0)以上でした。自分が10月に受けた際に6.0で点数は足りなかったのですが、Admission advisorの方に、Kaplanの英語試験(ReadingとListeningのみ)を受けるよう言われ、結果を報告したら、”I am pleased to confirm that your application has now been approved, and you have been accepted onto the MPH Master of Public Health programme, congratulations!“と返ってきて、あっけなく合格となりました。あくまでIELTSの点数はあくまで目標で厳密ではなく、CEFRのCレベルくらいには達して欲しいよ、くらいのニュアンスなのかと思います。

このプログラムのほとんどがオンデマンドだと思うのですが、英語でのoutputをいかにできるかが必要な能力だと思います。まだまだ英語のoutputが弱い自覚があるので、勉強していかないとやばいのは事実です!頑張ります。

 

⑤料金が比較的安い

家族がいる身なので、学費はとても大事な要素でした。アメリカのオンラインMPHコースは600万円〜(円安なので1000万円もざら!)となってしまっております。イギリスのオンラインMPHコースは、概ね200-300万円あたりかと思います。UoLは2年半で£15300(2022年12月現在で250万円くらい)ですが、自分の場合ベトナムに住んでいるからなのか?割引が聞いて200万円ちょっとでした。日本では東大SPH1年コース80万円、2年コース130万円程度とおそらく最低価格ですが、帝京や聖路加など私立大学では200万円近くあるいはそれ以上かかります。

それぞれのコンテンツについて、いくらからが高いかと思うのは人それぞれと思います。自分自身はオンラインではありながらUoLでMPHを受けられるのに200万円ちょっとというのに対してコスパが良いという思いで申し込みました。

 

⑥国際色豊かである

オンラインであるから、またイギリス、その中でも特にリヴァプールが公衆衛生の先駆けとなっている地域であることからなのか、各世界からの受講生がいることも魅力です。自分自身は日本やベトナムに限らず、世界の子どもの医療について知りたい気持ちがあるため、とてもありがたいです。これから多くの国の方々とコミュニケーションを取れると思うと楽しみで仕方ありません。世界には196か国(日本が承認している国)ありますが、その内171か国のUoL卒業生がいるそうです!

 

⑦タイミング

最後に、背中を押してくれたのは入学のタイミングがばっちりだったことです。自分自身がMPHを受けたいと思い始めたのは2022年9月末だったのですが、多くの大学院が9-10月スタートのため、1年待たないといけませんでした。UOLは1月、4月、10月の3つのスタート時期があります。英語の勉強もしつつ準備をして、3ヶ月後の1月に間に合わせるくらいが自分にはベストタイミングだったため応募を決意しました。

 

以上つらつらと並べてしまいましたが、最終的にはフィーリング(自分と合いそうかどうか)だと思います。サッカーはそれほど詳しくはないのですが、Liverpoolの響きが自分は好きなので行きたいと思いましたし、父親に大学院入学を伝えたときはビートルズファンだから喜んでくれました。それから父はManchester et Liverpoolをずっと口ずさみなながら、いいなぁと言っています🤣どこで学ぶかというより、何を学ぶかだと思うので、実際に始まってから出ないと分からないと思いますが、以上が自分がUoLのonline MPHコースを選んだ理由です。少しでもどのMPHコースを選ぶか迷っている方の役に立てればと思っています。

 

それではまた😊

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コメント1件

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